コラム

遺言の執行と遺言執行者

弁護士 幡野真弥

 遺言は、遺言者の死亡時に効力が発生します(民法985条)。
 遺言の内容のなかには、内容実現のために特別の行為を必要としないもの(相続分の指定、遺産分割方法の指定など)と、内容実現のために何らかの行為を必要とするもの(認知、相続人の廃除、遺贈など)があります。

 そして、遺言者に代わって、遺言の内容を実現するために必要な処理を行うことを遺言の執行といい、その処理を行う者を遺言執行者といいます。

 遺言者は、遺言で、遺言執行者を指定することができます。また、遺言で、遺言執行者の選任を第三者に委託することもできます(1006条1項)。
 遺言執行者がないときは、家庭裁判所が、利害関係人の請求によって、遺言執行者を選任することができます(1010条)。
 遺言執行者に指定・選任されても、遺言執行者になる義務はないため、辞退することも可能です。

 遺言執行者は、直ちにその任務を行わなければならず(1007条1項)、遺言の内容を相続人に通知しなければなりません(同条2項)。また、相続財産目録を作成して、相続人に交付しなければなりません(1011条1項)。
 遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有しています(1012条1項)。
 遺言執行者がその任務を怠ったとき、その他正当な事由があるときは、利害関係人は、解任を裁判所に請求することができます。

 遺言に報酬の定めがある場合や、家庭裁判所が報酬を定めた場合は、任務の終了後に、遺言執行者は報酬を受け取ることができます。
 遺言の執行に関する費用には、相続財産から支払われます(1021条)。