コラム

寄与分の算定

弁護士 幡野真弥

 寄与分は、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して裁判所の裁量により定められます(904条の2第2項)。ですので、遺言書で寄与分を指定しても、寄与分として意味があるものにはなりません。

 寄与分は、相続財産の価額から、遺贈の価額を控除した額を超えることはできません(904条の2第3項)。例えば、相続財産が5000万円、遺贈の価額が3000万円だったとき、寄与分は2000万円を超えることはできませんし、遺言で、遺産全部が遺贈されていた場合などは、寄与分を定めることはできません。

 寄与分は、条文上は、他の相続人の遺留分を侵害するような算定をすることも可能です(寄与分は遺留分に優先する、と言われることもあります)。しかし、他の相続人が遺留分を有していることも、寄与分を考慮する「一切の事情」のなかの1つの事情にはなります(東京高等裁判所平成3年12月24日決定)。

 次に寄与分がある場合の、相続分の算定方法を見ていきましょう。

■具体例
 被相続人Xの相続人は、配偶者Yと、子A及びBだとします。
 相続財産は5000万円、Bに寄与分1000万円が認められるとします。


 まず、相続財産の総額から、寄与分を控除します(5000万円 - 1000万円 = 4000万円
 この4000万円を、みなし相続財産といいます。

 みなし相続財産に、相続分を乗じて、一応の相続分額を算定します。
 Yの一応の相続分額 =4000万円×2分の1=2000万円
 Aの一応の相続分額 =4000万円×4分の1=1000万円
 B の一応の相続分額 =4000万円×4分の1=1000万円

 最後に、一応の相続分の額に、寄与分額を加算します。
 Bの相続分額=1000万円 + 1000万円 = 2000万円

 結局、Yの具体的相続部は2000万円、Aは1000万円、Cは2000万円となります。