遺言書の検認②
弁護士 長島功
以前のコラムで遺言書の検認について記載しましたが、手続の内容等についても解説していこうと思います。
遺言書の検認とは、家庭裁判所においてその状態を確認し、その結果を調書に録取する手続です。後日遺言書が偽造されたり変造されることを防止する目的でなされるものです。
1 対象となる遺言書
公正証書遺言以外の自筆証書遺言(ただし、遺言書保管所で保管されているものは除きます)、その他の方式により作成された遺言書が対象です。
公正証書遺言は証書原本が公証役場で保管されているため、偽造変造などのおそれがないことから、検認手続は不要とされています。遺言書保管所に保管されている遺言書も同様に不要です(遺言書保管制度については、以前のコラムをご参照ください)。
2 申立て
遺言書の保管者又は遺言書を発見した相続人は、遅滞なく相続開始地の家庭裁判所に検認の申立てをしなければならないとされています(民法1004条1項)。
3 検認の手続
申立てがあると、裁判所は検認期日を指定して、申立人や相続人に通知を行います。
そして、検認期日当日は、相続人等の立ち合いの下、遺言書の形状(枚数、文言、字体、加除訂正箇所など)について、見分が行われます。また遺言書の発見場所や保管状況、遺言者の筆跡と考えられるか等について相続人などに審問が行われ、最終的には遺言書検認調書というものが作成されることになります。
なお、遺言書が封印されているときは、検認手続にて開封をしなければならず、家庭裁判所外で開封した場合には過料に処せられるとされています。
4 効果
上記のとおり、検認はあくまで遺言書の状態確認をして、それを保存し、その後の偽造変造などの防止するためのものなので、その遺言の有効無効といった実体上の効果があるものではありません。
そのため、検認手続を経たとしても、その遺言が無効であるとして、遺言の効力を争うことは可能です。
5 取下げ
この検認の申立ては、審判前であっても、家庭裁判所の許可がなければ、取下げができないとされています(家事事件手続法212条)。
上記のとおり、検認は法律上の義務とされている場合があることによるもので、例えば申立後に遺言書を紛失・滅失してしまったというような場合や、遺言書と誤解をして申立てをしたような場合でなければ、取下げは認められないと思われます。