コラム

相続の放棄と承認〈熟慮期間①意義と相続財産の管理〉

弁護士 幡野真弥

 相続人は相続開始後、一定期間(熟慮期間)内に、相続を承認するか放棄するか、選択することができます(民法915条1項)。
 承認には、単純承認と限定承認の2つがあります。
 単純承認をすれば、相続人は、相続財産を、相続分に応じて承継します(920条)。
 限定承認をすれば、被相続人の債務については相続したプラスの財産の限度で責任を負います(922条)。
 放棄をすれば、相続人ははじめから相続をしなかったことになります(939条)。
 放棄や承認は、撤回することができません(919条1項)。もっとも、詐欺や強迫などの取消原因があれば取り消すことができ(919条2項)、また無効を主張することはできます。

 相続人が熟慮期間内に放棄をするか承認をするか選択をしなかったり、相続財産の処分行為など一定の行為をした場合は、単純承認をしたものとみなされます(921条)。
 相続の承認するか、放棄するか選択をすることができる期間は、「自己のために相続の開始があったことを知った時から3箇月」と設定されていますが、熟慮期間は、家庭裁判所で伸長することができます(915条1項但書)。相続財産の調査には時間がかかることが多いためです。

 相続財産は、相続開始と同時に相続人に承継されますが(896条)、相続人が承認するまでは確定的に帰属しません。そこで、相続人は、承認・放棄をするまでの間、相続財産を管理する義務を負います(918条1項)。
 管理が困難な場合は、家庭裁判所は、相続財産の保存に必要な処分を命じることができます。必要な処分とは、具体的は、相続財産管理人の選任や相続財産の換価処分があります。
 相続人が単純承認したあとは、他の相続人と、遺産分割までの間、民法249条以下の規定に基づいて相続財産を共同管理します。
 限定承認した場合は926条に基づいて、放棄した場合は940条に基づいて管理義務を負います。