相続法改正 遺言制度④
弁護士 長島功
今回からは,遺言執行者の権利義務に関して,各論的なお話をしていこうと思います。
まずは,遺言執行者の義務についてです。
遺言で遺言執行者として指定をされた場合,まず就任を承諾するか否かを決め,承諾する場合には,直ちにその任務を開始しなければなりません(民法1007条1項,以下,民法は省略)。
そして,任務を開始した場合には,遅滞なく遺言の内容を相続人に通知しなければならないことが,この度の改正で明記されました(1007条2項)。
条文上,通知の内容としては,「遺言の内容」のみが挙げられ,遺言執行者になったことは明記されていませんが,その任務の一環として遺言執行者に就任したことも当然に通知すべきと考えられています。
これは例えば,遺贈(遺言で贈与がなされることです)がなされた場合,遺言執行者がいれば,遺言執行者が履行義務を負い(1012条2項),相続人は負わないのに対し,遺言執行者がいないのであれば,相続人が履行義務を負うことになり,相続人は遺言執行者の有無に大きな利害関係を有していることから,相続人を保護するために求められているものです。
そのほか,従来より規定はありましたが,遺言執行者の義務には,財産目録を作成して相続人に交付する義務(1011条),相続人からの要求があれば,遺言執行の状況を報告する義務(1012条3項,645条)等があります。
これらの義務に違反した場合には,遺言執行者は損害賠償責任を負わなければならない場合もあるため,遺言執行者は弁護士等の専門家を指定することも多いです。
遺言執行者には,一定の責任が発生しますので,誰を指定するか検討する際は,参考にしてみてください。